つみたてNISA は非常に有利な仕組みです。でも、どのように利用するのがいいのでしょうか。
一つのヒントとして、公的年金の積立金の運用を真似するという方法がありそうです。ただ、単純に真似するのではなく、一工夫した方がいいですけどね。
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つみたてNISA で何を積立てるかは難しい問題
つみたてNISA は非常に有利なしくみです。でも、具体的にどのように運用するかという話になると、結構困る人が多いのでは無いでしょうか。
投資信託は種類が多すぎます。どれを選ぶのがいいのか、よくわかりませんよね。
人気の投資信託を選ぼうと思う人がいるかも知れませんが、それはあまりおすすめしません。人気の投資信託は、金融機関が頑張って売っている投資信託ということが多いからです。
金融機関が積極的に売る投資信託というのは、金融機関が儲かる手数料が高い投資信託ということです。そうであれば、私達に取って不利な投資信託と言えるでしょう。
公的年金の積立金の運用が参考になる
実は、つみたてNISA を運用するには、すごく身近なところにヒントがあります。それは、公的年金の年金積立金です。
この年金積立金を真似すれば、実は「つみたてNISA」の運用は簡単なのです。
でも、そもそも公的年金の年金積立金というのは、一体何なのでしょうか。また、この運用は過去には上手く行っているのでしょうか。
そして、どうやって真似すると言っても、どうやって真似すればいいのでしょうか。確認してみましょう。
年金積立金とは
年金積立金というのは、公的年金の保険料の一部を積み立てたものです。実は、世界で最も規模が大きいファンドだとされています。
公的年金(国民年金や厚生年金)の保険料の大部分は、その年の給付に回ります。老後の年金の原資として、配られてしまうわけですね。
しかし、その全額を配っているわけではありません。年によっては余りがあり、それはGPIF というところによって、運用されています。
100兆円を超える年金積立金
そして、その積立金が、かなりの額まで積み上がっているのです。具体的には、2017年3月末の時点で、153兆4130億円の残高があります。1
ちなみに、日本のGDP は500兆円台です。ということは、この金額は、日本のGDP の3分の1近くの規模に達するわけです。
規模が大きすぎてシンプルな運用しか出来ない
これだけ規模が大きい基金だと、あまり複雑な運用はすることができません。大きすぎて、あまり細かいことをやっても意味がないのです。
例えば、1年で2倍になるような小さな会社の株を一つ見つけたところで、大勢には全く影響がありません。153兆円のなかの100億円とか200円程度増えたところで、意味はありませんよね。
ですから、基本的には、非常にオーソドックスな運用をしていると考えられます。
情報公開もされているので簡単に調べられる
しかも、公的年金の運用なので、どういう運用をしているかの情報公開もしっかりしています。どんな運用をしているかは、ネットでも簡単に調べることができます。
オーソドックスな運用で、情報も公開されているので、真似もしやすいわけですね。実際に調べてみるとわかりますが、私たち個人でも、かなり簡単にまねをすることができます。
パフォーマンスも悪くない
それでは、公的年金の年金積立金は、運用の参考になるほど投資のパフォーマンスがいいのでしょうか。
テレビや新聞のニュースでは、年金積立金の運用が失敗すると大々的に取り上げられます。ですから、年金積立金の運用は大失敗して大赤字だと思いこんでいる人すらいるようです。
本当に、マスコミって罪ですよね。ミスリードばかりやっているような気がします。
しかし実際は、年金積立金の運用自体は、そこそこうまく行っています。十分に私達の参考にしていい運用成績だと言っていいでしょう。
とは言え年金積立金自体は、オーソドックスな運用をしているので、びっくりするほど儲かるわけではありません。また、国内外の株式の割合も多いので、単年でみると赤字になることはあります。
ですから、期待し過ぎも禁物ですけどね。それでも、悪くない結果が出ています。
具体的にどの程度儲かっている?
年金積立金を運用するGPIF のサイトによると、平成13年度から平成30年度第2四半期の収益率は、年率換算で3.33%ということです。つまり、1年に3.33%の割合で増えたということですね。
しかも、以前は、株式の比率は現在と比べて小さいものでした。例えば、2014年3月末時点では、国内債券の割合が半分を超える53.4%もあったようです。2
それだけ安全な運用をして、これだけの収益率があるわけです。株式だけで運用していたら、更に大きく儲けられたでしょう。十分に参考になると言えそうです。
ちなみに、これを書いている2018年度は、国内債券の割合は35%にまで落ちています。よりハイリスク・ハイリターンの運用をするようになっているわけですね。
年金積立金の資産運用
さて、それでは、年金積立金の運用はどのように行われているのでしょうか。
資産の割合を維持することに注力
資産の運用というと、頻繁に売買をしているというイメージを持っている人もいるでしょう。しかし実際には、事前に決めた割合で資産を持ち、その割合を維持するということをしています。
ようするに、買って放置が基本戦略です。時々微調整する以外は特に何もやっていません。
つまり、一部の人が持っているような頻繁な売買はしていないわけですね。頻繁な売買は、投資というより投機というべき行為です。
年金積立金のポートフォリオは
それでは、実際の年金積立金のポートフォリオはどうなっているのでしょうか。GPIF のサイトによると、次のような配分で資産を持つことが決まっています。
- 国内債券:35%
- 国内株式:25%
- 外国債券:15%
- 外国株式:25%
ちなみに、これらの資産は、常にこの数字になっているわけではありません。乖離許容幅というのが決まっていて例えば国内債券だと、±8%までは増減が許されます。
また、この数字はずっと同じというわけではありません。例えば、平成18年度だと、次のような割合でした。
- 国内債券:67%
- 国内株式:11%
- 外国債券:8%
- 外国株式:9%
- 短期資産:5%
この当時と比べると、国内債券や短期資産の割合を減らして、リスク資産の割合を増やしています。
実際の私たちの資産運用では、このポートフォリオを真似して運用すればいいわけです。ただ、国内債券や短期資産は除外して考えて、国内株式、外国株式、外国債券の割合を5:5:3になるようにすればいいでしょう。
というのも、例えば定期預金や現金は、これらの資産に近いものです。資産運用でわざわざ組み込まなくても、すでに持っていると考えていいのです。
つみたてNISAをどう使うのか
基本的な考え方はここまでに書いた通りですが、「つみたてNISA」を使う場合はもう少し検討が必要です。というのも、つみたてNISA では外国債券を使った投資信託は購入できないのです。
ということは、国内株式と外国株式は「つみたてNISA」を使えばいいでしょう。そして、つみたてNISA を使えない外国投資信託だけは、普通の投資信託の積み立てを使えばいいのです。
つみたてNISA の場合は、1か月の積立額は3万円ちょっとです。ですから、月々の積立額は、国内株式と外国株式を1万5000円に設定すればいいでしょう。
また、外国株式に関しては、投資信託で月々8,000円を積み立てればいいわけです。
月3万8000円を積立てるのが難しいという事なら、この比率に合わせて金額を増減させてください。
リバランスは月々の積立額で対応
運用の結果、しばらく時間が立つと、資産の割合がずれてくるはずです。国内株式、外国株式、外国債券の割合を5:5:3になるように買っていても、6:4:3のような比率になることがあります。
こういう場合は、リバランスという事をしないといけません。リバランスと言うのは、資産を売ったり買ったりして当初の予定通りの割合に戻すことです。
リバランスは少し頭を使います
ただ、つみたてNISA の場合、このリバランスには少し気を使った方が良いでしょう。
今回の例で言うと割合が大きくなった国内株式の投資信託を売って外国株式の投資信託を買えばリバランスは出来きます。ただ、それでは、国内株式の売却に対して所得税や住民税がかかる可能性があります。
つみたてNISA を使っていれば所得税などはかかりません。ただ、売却益に対する非課税枠の利用は少しでも先送りした方が有利です。
どういうことかというと、つみたてNISA では買付できる枠が決まっているからです。リバランスのために売ってしまうと、つみたてNISA で運用できる金額が減ってしまうのです。
積立額は柔軟に変更
これを避けるために、少し工夫が要るわけです。具体的にどうするかと言うと、月々の積立額を変化させて、バランスを維持します。
今回の例で言うと、国内株式の月々の買付額を減らして、外国株式の月々の買付額を増やします。そして、資産の割合が戻ったところで、買付額を元に戻すわけです。
ようするに、積立額を柔軟に変えることで、ポートフォリオの比率を維持するわけですね。
きっちり割合を維持しようと思いすぎると、なかなか大変な思いをするでしょう。毎月のように積立てる投資信託の割合を変えないといけません。
しかし、実際には、そこまで神経質になる必要はないと思われます。まあ、1年に1回とか半年に1回と言ったペースで、リバランスについて考えてみると良いでしょう。
これをするだけで、完全に放置するよりは、かなり良いポートフォリオになるはずです。ちょっと大変ですが、それでも半年に1回程度のメンテナンスなので、面倒くさがらずにやってください。逆に言うと、これ以外では基本的には放置で大丈夫ですから。
外国債券を外すと運用がさらに簡単に
今回は年金積立金のポートフォリオを参考にするという事でしたので、外国債券をも積立てるという方針でここまで書いてきました。しかし、外国債券はポートフォリオから外してもいいという意見の人もいるようです。
簡単にいうと、外国債券はリスクの割にリターンが小さく、ポートフォリオ全体で見ても組み入れるメリットが無いというのが主張の根拠です。有名なところだと、山崎元氏などが主張していますね。3
リスクと期待リターンを計算した上での主張なので、説得力があります。
外国債券を外して良いということになると、今回考えるポートフォリオはさらに簡単になります。つみたてNISA を使って、日本株と外国株の投資信託を1対1の比率で積立てればいいだけだからです。
月々3万円ちょっとまで利用できる計算なので、1万5000円ずつ積み立てれば良いでしょう。そして、運用の結果バランスが変わってきたら、買付額に差を付ければいいのです。
外国債券が入らないと、つみたてNISA だけで完結できるのも良いですね。もちろん、つみたてNISA の枠では足りないという事であれば、通常の投資信託の積み立てを利用しても構いません。
- 年金積立金、過去最高153兆円 昨年度
日経新聞 2017/8/10 18:51 [↩] - 公的年金運用、国内債が4割下回る 株増えリスク高まる
日経新聞 2015/7/10付 [↩] - ■ なぜ個人のポートフォリオに外国債券が不要なのか?| ホンネの投資教室 [↩]
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